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哈日杏子『我得了哈日症(日本好きという病気になりました)』、1998年。
哈日杏子は台北人で、漫画家兼旅行作家である。四コマ漫画でデビューし、「哈日」という流行語のブームを引き起こした張本人である。
この本は、作者が初めて活字にしたもので、長年日本を旅行した経験をまとめており、日本のタレント、洋服、民俗、美食、電気製品などの様々な経験談が書かれており、読者にカルチャー・ショックを引き起こした。本の巻頭に、「台湾の空気を吸って台湾の水を飲んでいても馴染めないと感じたり、いつも日本のすべてに高い関心があったり、自分が台湾に滞在している日本人だと錯覚しているのであれば、疑いなく、あなたはすでに哈日症(日本好きという病気)にかかっているのです」とあるように、本に描かれている「哈日」の状況が窺える。
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李永熾『日本式心靈:文化與社會散論(日本の心:文化と社会概論)』、1991年。
李永熾(1939〜)は台中人で学者で随筆家である。日本史、中国近代思想史、日本近代史研究などに尽力し、多くの日本文学作品を翻訳している。
この本は雑誌『當代』と『歴史月刊』に発表された文章をまとめたものであり、日本全体を概説し、思想と文化がテーマである。文学作品をとおして、日本の芸能や映画、身体、フェミニズム、異端などといった総合的な論述を深めており、日本民族の精神世界および独特の内実を説明し、日本人についてもっと深い理解を行うことが目的となっている。
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邱永漢著、朱佩蘭訳『香港』、1996年。
邱永漢(1924〜2012)の本名は邱炳南で台南人。詩人、小說家、随筆家。1948年12月に、台湾独立運動に参加したために国民党政府に追われ香港に亡命し、1954年に日本に移住した。
『香港』の初版は1956年に出版されており、小説「偷渡者手記(不法滞在者手記)」、「検察官」二篇が収録されている。前者では、主人公は香港に亡命した台湾の青年、賴春木で、異国に不法滞在した際の貧しい生活と心境が描かれている。後者では、主人公の王雨新は東大法学部を卒業し、戦後、台湾に戻って検察官になり、官僚の汚職を摘発することによって二・二八事件に巻き込まれて消されることになる。邱は『香港』で1955年に日本文学界における重要な大賞である直木賞に受賞し、はじめて日本人以外の外国人受賞者となり、日本の文壇の注目を浴びた。